第一部 認知症になった母の人生

第3章「病気の発見~入院=大きな転換点」のまとめ

2013年には、通院先の病院で肺血栓が見つかり、入院治療になりました。その際、MRIを使った認知症の診断が行われ、認知症の確定診断が出ました。これを受けて退院後の生活を維持するために、リフォームを行い、また在宅のサービス利用を計画しましたが、こちらの方は母が受け入れることはありませんでした。強く拒否したデイサービス。それが状況が変わり、穏やかに受け入れて言うことは後に述べましょう。

2015年には、認知症の進行に伴うと思われるいくつかのトラブルが起きています。独居の不安感がいろいろな対象に不信を向け、それが攻撃になったのではないかと考えられます。そのころ、母から妻へ一緒に暮らせないかという話もあり、同居への道筋も作られていきます。

【コラム 散歩から帰れる不思議】

外出しても帰宅できる力。この力はどこに宿されているのだろうか。

■認知症が進みながらも、一人暮らしをしていたとき、母は毎日散歩や買い物にも出かけた。一日に何度も買い物に行くときは、同じものを何度も買うということになるのだが……。

■しかし、そのときから不思議に思っていたのは「道に迷わずちゃんと帰宅できること」だ。母は認知症になってからも、毎日、必ず散歩に行く。散歩というのは、こちらの一方的な見立てで母からすれば歴とした「運動」なのである。

■母は短期記憶の顕著な障害があっても家に戻れる。しかし、一方では認知症高齢者の行方不明届は増加している(後に述べた)。

■認知症=徘徊(はいかい)=行方不明=事故。こういう「認知症=徘徊(はいかい)=行方不明=事故」というステレオタイプの考え方が闊歩(かっぽ)する。

■一般的に見られている認知症高齢者=徘徊=行方不明というものと母が帰宅できるということは何がどう違うのか。

■ではいったいどのようにして「短期記憶障害が顕著な母」が家に帰宅できるのだろうか?大学院生の研究にモデルとして参加してもらった。