「人が倒れている。この船は何の遭難通信も発していない。エンジンもかかっていないことから漂流船だ」まず、乗組員に意志を伝えた。

その後、船同士の情報伝達として国際信号に反応しないことから漂流船と断定。直ちに救助に向かった。

祐一と祐一の船は助かった。ただし、祐一は急性アルコール中毒で虫の息だった。それでも助かったのは、この大型輸送船には船医がいたからだ。この名医により祐一は命が助けられた。祐一は死の淵から生還した。そして意識が戻った。

「オエッ。気持ち悪い。飲み過ぎたかな? 完全な二日酔いだ。どうやら、どこかの船の中のようだ」まずは生きていることはわかった。

「何で俺の船じゃないんだろう?」昏睡中のことは全く覚えていない。点滴されている。

「漂流していたなんて想像もつかなかった。それより、家族の次に大事な俺の船はどこなんだろう? ローンがまだ残っているんだ。俺の船どこだ?」働いて早くローンを返さなきゃと思っているからとても心配になったが、点滴が繋がっているので動けない。しばらくすると、様子を見に船医のジョン=スミスがやって来た。

「えっ? 何で外人がいるんだろう?」目が覚めた祐一に気付いたスミスは喜んで言った。

「イットワズセイヴド」ネイティブな英語を聞いて祐一は意味がわからなかった。というよりも、今の自分の置かれた状況が何が何だかわからない。

「アイアムジャパニーズ」日本人を呼んでほしかった。

「ウエイトアミニット」スミスはそう言うと部屋を出ていった。実は乗組員の中に片言ではあるが日本語を話せる者がいたので、呼んできて通訳を頼んだ。

彼は何で今、祐一がここにいるのかをたどたどしい日本語で通訳した。片言でも英語をしゃべられるよりは全然ましだ。祐一はやっと、自分の船はこの大型輸送船に曳航(えいこう)されていることがわかったのでほっとした。まずは、救助してもらったことにお礼を言った。

「サンキューヴェリーマッチ」ありがたみを感じながらもひどい二日酔いで元気は出なかった。

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