私たちの春

「決めた。私の次の小説の内容は、十八歳の少女の恋の物語にするわ」

「何でも素材になるのね」私は言った。

「いいことも、良くないことも、人生で起こることは、何でも小説化できるのよ」

「リエの恋が成就しますように」

「私もリエの幸せを祈っている」

「二人ともありがとう。これからも私と正樹さんのことを見守ってね」

「うん。私たち三人にとって、初めての恋愛体験だものね」

「私たち三人で、リエの恋愛を大切にしていこうね」

私たちは、三人で見つめ合いながら頷き合った。十一月になって、銀杏の木もすっかり黄葉した。暑くもなく寒くもなく、空気も澄み渡り、私は一年のうちで、十一月が一番暮らしやすいと思っている。

そんなある日の昼休みも、私はリエとユミの三人で、お弁当を食べていた。

「私、今、悩んでいることがあるの」

「リエ、どうしたの?」私は尋ねた。

「実は、私の彼、正樹さんのことなんだけれどね。彼、来月、ニューヨークへ転勤することになってしまったの」

「えっ。それじゃあ、二人は離れ離れになってしまうのね?」私は心配した。

「それがね。私、プロポーズされたの」

「ウソ。本当に?」私は驚いた。

「本当なの。高校を卒業したら、私にも、ニューヨークへ来て欲しいって言われたの」

「一体どうするの?」私は質問した。

「今、迷っているのよ。だって私、まだ十八歳でしょ。正樹さんのことは好きだけど、結婚するには、まだ早過ぎる気がするの」

「リエの御両親は、何ておっしゃっているの?」私は尋ねた。

「正樹さんは、とてもしっかりしたいい人だから、私の好きなようにしなさいって言うの」

「独身主義を宣言していたリエに、結婚話が持ち上がるとは。人生、どんな展開が待ち受けているかなんて、全くわからないわねえ」私は腕を組みながら言った。

「私、子どもの時から英語を使う人間になることに憧れがあるし。海外生活にも魅力を感じているし。それに正樹さんて、本当にステキな人なの。だから思い切って、高校を卒業したら、ニューヨークへ行ってしまいたいなという気持ちが大きいの。だけど、私ってまだ大人になり切れていないところがあるから、結婚は少し早いような気がして不安があるの」

「フウム。確かに、十八歳はまだ子どもから大人になり切れていない年齢だよね。社会経験もないし」私は言った。

「実は私も、今、悩んでいることがあるの」

「ユミまで、一体どうしたの? 何があったの?」私は尋ねた。