第5章 適応障害についての疑問・2

就職という変化

もうひとつは、この勉強の仕方と関連があると思います。勉強は親や教師が言うことをすればよい、自分で考えることではなく、従い、行えばよい。時として(多くはお金を支払えば)何度でもやさしく教えてくれますし、結果の責任もそのプログラムを提供する側が保証してくれます。うまく行かない場合は、教師なり塾講師なりの責任になるかもしれません。そして下にも置かない様相で勉強していただく。

就職戦線を勝ち抜いて就職し、「どうですか?」と聞いたら「上司が上から目線でモノを言う」と言ったツワモノもいたようですが、すべてを用意され勉強をしていただいていた延長線上に働くことはありません。

つらさのポイント

次に若者のエピソードから、彼らがつらいと感じていることを3つほど、他にもあると思いますが、ピックアップしてみます。

①注意される、叱られる

実際に大きなミスをしたのかまずいことをしたのかわかりませんが、指摘されたり注意されたり叱られたりしたことが、仕事がつらいと感じる契機になっていることが多いです。

注意や叱責は珍しいことではありませんが、その程度も重要です。たびたび𠮟られる、強烈に言われる、そうすると傷つき、すべてを否定されたように感じ、「自分は仕事ができない」「自分はダメだ」と思うかもしれません。

実際の能力やその状況についてはその場にいるわけではないのでわかりませんが、誰が見てもひどい言われ方をしたのか能力がないのかを別として、この注意される、叱られる、自分が否定されるということに強く反応していることがうかがえます。

誰だってイヤです。

程度の差もありますが、初めて仕事をする場合、ある程度仕方がないのです。しかしそれにつまずくと、そこから先には進みにくく、成功体験にもなかなかたどり着けないまま、不安とともに出勤することになるのでしょう。