一章 自我が目覚めるお年頃

二 駄菓子屋の娘でよかった!

「えこひいきが……解決策なの?」

その言葉を理解できなかった私に、

「えこひいきされるのも実力のうちなんだよ。良男くんにはそんな力があるんだよ」

と父が嬉しそうに微笑んでいました。

「良男くんは可愛げがあるから、俺はえこひいきしたい!」

と言う父の意見に母も腑に落ちたらしく、「うんうん」と頷いていました。

「でも……どうやってえこひいきをするの?」

と想像がつかず、私は首をひねっていると……、母は

「まぁ……そのうち、思いつくから大丈夫よ。取りあえず答えが出てよかったわぁ」

と喜んでいました。良男くんのことを真剣に話し合う両親の姿を見て、(やっぱり、駄菓子屋の娘でよかった~)と心の中で嬉しく思う自分がいました。

その数日後、私がお店にいるときに、良男くんがやって来ました。母が話していた通り、革ジャン風ジャケットに銀色のクサリをジャラジャラぶら下げているのに、いつもと同じ明るい雰囲気で、

「おねえさん、コンバンワ!」

と目をクリクリさせながら挨拶をしてくれました。でも、後ろには眉がなく、目つきの鋭い二人が立っていました。三人でブタメンという小サイズのカップラーメンを買ってお湯を入れて、みかどを出て行こうとしましたが――。母は彼らを引き留め、新商品のうまい棒をプレゼントし、世間話を始めました。

母は私に『えこひいき決行』の目配せをしてきました。父も引き留め作戦に参加し五人で楽しそうに話をしている間に、私は台所にある中華鍋に注いだ油を熱して、ザルには、母が砕いておいた鏡餅をどんどん揚げていきました。

揚げたての餅に醤油をかけると、ジュッという香ばしい音とともに食欲をそそる香りが広がりました。

「良男くん、お友だちと一緒に裏の玄関まで来てくれる?」

と呼び寄せました。頷く良男くんは店の裏に回り、玄関を開けました。

「何? おねえさん?」

と瞳を輝かせていました。

「良男くんたち以外の子どもに見られるとまずいから、こっちに来てもらったんだけど……揚げ餅、持って行かない? 良男くんはいつも買いに来てくれるから、特別サービスよ」

広げた新聞にどっさりと揚げ餅を入れると、花束のようにすそを丸めて……、

「熱いから気をつけて!」

と言ってプレゼントしました。

「揚げたて? やった!」

と喜ぶ姿には幼さが残り、本当に可愛らしいと思いました。二月の寒い中、みかどの前にあるコンクリートブロックの上に三人して腰かけ、楽しそうに食べ始めました。

「美味しい?」

と聞くと、三人して

「うまい、うまい! こんなうまい揚げ餅、初めて食べた!」

と大はしゃぎしながら食べていました。『えこひいき作戦』を立てた両親は、何もなかったかのように、店の中から静かに彼らの様子を見守っていました。こんな些細なことで心底喜んでくれる三人は、絶対に不良になるはずがないと確信しました。えこひいき……何げに大成功!

こんなことがあるたびに、"駄菓子屋の娘でよかった!"と思っていました。両親と子どもたちとの思い出を、大島の情景とともに紹介していきたいと思います。