一章 自我が目覚めるお年頃

七 大人はみんなバカだから

「テク坊、おばあちゃんに意味を聞いたらいいよ~。それで、わかったら、おばさんにも教えにきてよ」

「わかったよ、教えてあげるね、おばさん」

テク坊は母の言葉で平常心を取り戻し、駄菓子を買って帰りました。その数日後、私たちが店の奥の居間でテレビを観ながら夕飯を食べているとき、テク坊がやって来ました。大切な『宿題』の答えを母に伝えに来たのです。

「ねぇねぇ、おばさん、ちょっと来て……」と母だけを店に呼び出して、ヒソヒソ話をしています。この前少し意地悪をしたからか、テク坊は私を完全に無視していました。

母の声が聞こえてきます。

「へえ、そうだったの。よかったね。おばあちゃんは素敵な人だね。みかどのおばさんもテク坊のおばあちゃんのファンになっちゃったわ」

おばあちゃんはテク坊に何を言ったのだろう――興味が湧いた私は、店に行きました。

「テク坊、私にも教えて! おばあちゃん、なんて言ったの?」でも、テク坊は思い切り舌を出していました。

「イヤ~だよ。ヒミツ、ヒミツ! おねえさんには絶対に教えないよ~。ね、おばさん!」

「ヒミツだよね。テク」と母までテク坊とタッグを組んでしまいました。

テク坊のおばあちゃんが何を言ったのか――それは未だに『ヒミツ』なのです。そのあともテク坊は毎日、友だちの達也や正男と一緒にみかどに来ますが、相変わらず調子に乗っています。