嫌いになったもの ――不倫から離婚まで―― 

新築

築60年の家を建て替えることになった、

ということは彼女と別れてやり直すのかと思った。(甘かった)

打ち合わせ中も、彼女から電話がなる。

「なぜ家を建て替える必要があるのか」と、電話からどなる声が漏れてくる。

老後のことを考え、平屋で車いすの通れるバリアフリー。

まだいない孫のために中庭を作り、みんなが集え楽しく穏やかな老後を夢見ていた。

新築1年で家を出ることになった。

子供たちも新築の家には数回しか来ていない。

心残りは子供たちや愛犬と遊んだ庭。

追伸 

家の新築担当者だった女性が電話をくれた。

新築の家をすぐにリフォームすると聞いて、事情が分かったようです。

涙声で「元気ですか」。

彼女の鼻水をすする音が続いた。

「泣かないで私は元気よ」。私も鼻水が顎まで垂れていた。

電話、本当にありがたかった。

彼女が私に電話することをたぶん、会社から止められていたと思うが、

彼女と私は一緒に食事をしたり、仕事とは離れて友達のような付き合いになっていた。 

区役所へ

先手を打ちに区役所に出掛けた。

その名も「離婚届の不受理申出」

ご存じの方もいらっしゃると思いますが、

女優の樹木希林さん、夫の内田裕也さんに勝手に離婚届を提出されていた。

私はそのことを思い出し、私の頭も捨てたもんじゃないと、自画自賛。

元夫を信じることに疲れ果ててしまった。

先手必勝。

追伸

意気込んで受付へ、意気込んだわりにはなかなか出てこない。

「離婚届けの、えーと」「離婚届ですか」と聞かれる

「離婚届できないやつの届けです」

離婚届提出の番号札を持って待っている人の視線が背中に刺さった。 

お気に入り

元夫は「俺はアナログ人間だ」と自負していた。

しかし、時代の流れでデジタルに。

メール、ネットを習得、仕事とは大幅に違う方向の楽しみを見つけて夢中になった。

お気に入りに(夜の街関連、接待を伴うお店)が増えていった。

さすがにヤバいと思ったか削除した。

彼は履歴を削除することを知らなかった。

追伸

ホテルからメールが来ていた。ご宿泊の確認。

お客様でも来るのかと思った。

「先日、お問い合わせのキングサイズベッドご用意できましたのでお知らせします」

なに、お客様とキングサイズベッドで寝るのか。

そんな大きなベッドでお客様と何をするのか。

帰ってきたら膝を交えて、じっくりと聞いてみようと思った。