移住したばかりの夏から秋の終わりまでは、問題ばかりが起きて、理想と現実がほど遠いことに嘆くばかりでした。新しい仲間も加わり、ぎんちゃんはついつい調子に乗り過ぎて、毎夜生き物たちを相手に、人間の生き方の醜さを愚痴として吐き出しているに過ぎませんでした。あの頃の仲間たちには、本当に悪いことをしたと反省するばかりです。

今日は、久しぶりに里山の森の中に入ってみたくなりました。うっそうと木々が生い繁っていて、すっかり手付かずの自然そのものの森となってきました。

一緒に付いてきた柴犬しばいぬさんも、もう二代目になっています。先代の柴犬さんが、この森に入って来たときはどうなるかと思いましたが、うまくこの土地に一緒に棲めるようになって安心しました。

ぎんちゃんが柴犬さんに言います。

「あなたの父さんは、捨てられてこの辺に迷い込んだんだよ。そして、イノシシさんに遭遇する。大変だったと思うよ、都会の犬だったから」

柴犬さんは、思い出しながら答えます。

「随分とその頃の話をおいらも聞かされたよ。ぎんちゃんに会えて運が良かったと言っていた。イノシシさんと出会ったこの場所が好きだったみたいだよ」

ぎんちゃんは、初めて聞く話でしたので、納得したように言います。

「それで、死んだらここに埋めてねと言っていたんだね」

柴犬さんが続けます。

「ぎんちゃんには感謝しなよと言われた。おいらも飼犬だったけど、飼育放棄された犬として保護されたからね。そして偶然に出会えて引き取ってくれたからね」