純太は家に着くと直ぐに風呂場に向かった。洗面台の鏡の前に立つと痩せて顔色の悪い、青春とは程遠い輝きのない顔があった。

長くなった前髪を手で押し上げ髪の生え際にぽつぽつとニキビらしいものを発見。まだ噴火前の赤味を帯びたちょっと盛り上がったニキビの少し下にある、傷ともいえない小さな点を見た。

チョークが当たった跡だ。左右に顔を動かし傷の様子を確認する。軟膏のせいで少し光っていた。野島に指摘されるまでもなく大した事はなかった。だけど家にあった大きめのバンソウコウで額の点を覆った。

前髪を垂らしてもバンソウコウは目立った。これで明日学校に行くつもりだ。

井上のチョークが額を直撃した事はかえって良かった。

アキラでさえその後俺にからんでくる事はなかった。バンソウコウは、皆に再び今日の出来事を思い出させる印になるだろう。バンソウコウの効果を期待した。

玄関が開いた。洗面台のある風呂場から顔を出すと近くの会計事務所で事務のパートとして働いている美由紀が帰宅した。純太が洗面所から急に顔を出した事に驚いて、続いて額のバンソウコウに驚いて、

「またー、学校で何しでかしたのよ」と心配しているというより、怒っているような調子で言った。

「別に」

「別に、じゃないわよ、まったく」

美由紀は言うだけ言うと、息子がろくに返事をしないと分かっているのか、それ以上追及する事もなく両手に買い物袋を提げて台所に移動した。

「何買ったの? 仕事に行く前に荷物届いてたから机の上に置いておいたけど」

一昨日ネットで注文したものがもう届いたらしい。

「何でもないよ」

美由紀は相変わらず忙しそうに台所を動き回っていた。純太の買い物にもあまり興味がないようだった。自分の部屋がある二階へ急いで階段を駆け上がった。

【前回の記事を読む】コンビニのゴミ箱に投げ捨てた「災難の種」。学校のことを親に話す気はなかった。