まえがき

日本の会社と外資系を比較した一般向けの本はいくつか出版されています。しかしその多くは、面接時の心得、自己PRの方法、上司のよい評価を得るためにすべきこと、好ましい勤務態度など、いわゆる"ハウツーもの"や、外資系は成果主義だ、昇進が早い、仕事を任される、大きな権限を委譲されるなど、外資系はこうだといわば決めつけている本がほとんどです。

さらに、異なった言語や文化的背景のもとで生まれ育った人たち、つまり日本以外の国や地域で生まれ育った人たちとのコミュニケーション、すなわち異文化コミュニケーションの観点から書かれているものは見あたりません。日本はそういったことを気にする必要が全くない、程度の差はあるもののほとんどの人が同じような考えを持っている社会だからです。そういう国に私たちは住んでいるのです。

しかし世界を見わたすと、同じ国のなかで言葉も違えば文化的な背景も異なる人たちが一緒に住んでいることが稀ではありません。私たちはそうとは気づいていませんが、日本はどちらかというとホモジニアスな社会、色彩でいえばモノトーンな国なのです。

一方ビジネスの世界ではグローバル化や競争がよりいっそう進行し、日本における外資系企業や海外へ進出する日本の企業もますます増加しています。

最近は新型コロナウイルスが世界中で猖獗(しょうけつ)をきわめたため、一時的に急激に減少したものの、将来は再び多数の外国人観光客が日本に来るでしょう。また日本で働く外国人労働者も、人手不足を背景にその数はさらに増えると思われます。

こういったなかで、日本の会社や外資系を問わず、ビジネスパーソンや一般の人々を問わず、より多くの人たちが異文化コミュニケーションに関心を持つようになれば、ビジネスで役に立つだけでなく、一般の日本人と訪日外国人観光客や外国人労働者などとの相互理解の促進にも役立つのではないでしょうか。