1 外資系でよく見かける社員

日本の会社で働きにくい人、外資系で評価される人

もちろんこれは外資系の会社か日本の会社かの「二社択一」ではなく、どちらでも評価される人もいればその逆もあり得ます。ではその違いはどこにあるのでしょうか。

一つは仕事に対する積極的な関与や前向きな態度です。例えば、会社のなかでは会議で顔を見ながら議論することもあれば、メールで連絡したり電話で話したりすることがあります。

こういった場合に、外資系に転職してきた人のなかには、積極的に自分の意見を言ったり、コメントや質問をしたりする人がかなりいます。こんな発言をしてもいいのか、こんなことを自分より地位が上の人に聞いてもいいのか、上司の事前の了解もなくこの場で意見を言ってもいいのか、といったことをあまり気にしているようには見えません。

しかし、日本の会社で、上司や同僚など関係者の目をあまり気にせずにそういったことをすると、おそらくその人はチームの一員になることができず、一人だけ浮きあがった存在、差し出たことをする特異な人と見られてしまうでしょう。

会社内のしきたりや形式をあまり気にしない人も外資系にはかなりいます。過去ずっとこのようにやってきたからこの件も同じようにとか、この件はまず関係者に根回しをしてからでないととか、順序を踏んで進めないと後々面倒になるといった、その会社のなかでの暗黙の了解事項や慣行にしたがって仕事をすることに対し、何となく違和感を覚える人たちです。

換言すると、社内の部門間の調整などの社内営業にエネルギーを使うのではなく、仕事はビジネスライクにやりたい人たちです。

このような人たちにとっては、できる限り早くかつ確実に目標を達成するためにこそ意を用いるのであって、社内の暗黙の了解事項や調整などのために心を砕くことは意に沿わないことです。こういう人たちは、一般的な日本の会社での仕事のやり方、つまり日本ムラの掟にしたがわない人たちなので、早晩ムラから出るしかありません。

なお、外資系といっても、大多数の社員がこのような人たちということではありません。従業員の数が何百人、何千人といった規模の大きい外資系では、このような人たちは少数派です。

ましてや近年になって外資に買収された日本の会社の場合、ほとんどすべての社員の考え方は依然として日本の会社のままです。そのような環境のなかへ、ビジネスライクに仕事をしたい人たちが入ってくると、社員間で軋轢が生じることがあるのは当然でしょう。

しかし、一般的にシニア・マネジメント(経営陣の上層部)は、買収した日本の会社の組織、企業風土や企業文化を外資系的に変えようとするので、規模が大きくなればなるほどゆっくりですが、日本の会社的な考え方をする社員は、少なくとも中間管理職のなかでは徐々に減少していきます。