第三楽章 ときを超えて

Ⅰ大地と共に

眠りにつく前の静かなひととき、砂漠のような風景が、脳内に浮かび上がってきました。いつものことながら、それは突然にやってきます。茶色い風景、遠くにも茶色い山が見えています。

アメリカ北西部のイメージですが、荒野を駆ける男! といったところでしょうか。馬に乗って、土煙りを巻き上げて、銃を腰に携える白人男性の姿が現れました。カウボーイハットをかぶり、浅黒く日焼けしたマッチョ気味なスリム体型で、まあ、カッコ良さげな風貌を感じます。

でも、子ども時代は全くと言っていいほど、情報が浮かんできません。記憶を消し去りたいほどに、思い出したくない過去だったということなのかなと思えました。とっくの昔に忘れてしまったような、かなり悲惨な子ども時代を過ごしたようだ……というのはキャッチできました。

どうやら、生まれてまもなく、布一枚に包まれて捨てられてしまったようです。教会の近くの大きな木の根元に、ぽつんと置かれていたイメージがわいてきました。野犬のエサにならずにすんでよかった。どこで、どんなふうに育てられたのかも不明です。教会で育てられたのでしょうか。あるいは、子どもが授かることを望みながら、未だ授からない夫婦に預けられたのでしょうか。

子どもなのに、楽しいという感覚が少なかったのかもしれません。大人の目を気にする、目立つことを避ける子どもだったようです。そんな彼は、動物のことが大好きでした。いつしか馬を乗りこなすようになり、成長過程で身につけたコミュニケーション能力は、気が付けば得意なものとなっていました。

正義感にあふれ、自然を愛する彼はやがて、ネイティブのインディアンたちと交流するようになっていました。何度も行き来をするうちに、あるとき、美しい娘と出会いました。畑作業を手伝ったり、村の子どもたちと遊んだり、彼女と一緒に過ごすことで、恋愛感情が自然と芽生えていったようです。