第一章  ギャッパーたち

(一)畑山耕作

妻が旦那に、「何で、人の下着なんて盗んでくるのよ。どうせ盗むんなら、私のにしなさいよ。私のパンツでいいでしょ。どうして、そんな人のパンツなんて集めるの」

「えー? お前、パンツなんて履いてたか。物干しで見たことないぞ。干してあるのは、俺のと息子のくらいしかないぞ」

「私のは別に洗ってるのよ」

「別に干してあるのはあったけど、あれは炭とか入れる麻袋じゃないのか」

「何でうちに炭なんてあるのよ。失礼ね、私のおパンツよ」

「でかくて、でろでろしてて、どう見ても麻袋か寝袋にしか見えないけどな」

「ほんとに失礼ね。炭の袋とか、寝袋とか。炭なんて家にはないし、私のパンツで誰が寝るって言うのよ。そうじゃないでしょ。他人のパンツの話でしょ。大体、人のパンツなんて、どんな人が履いてるか、分からないでしょ。気持ち悪くないの? すっごいブスかもしれないし、私よりおばさんかもしれないでしょ」

「分からないから、いいんじゃないか。想像できるからね。きれいな人をね」

「おじさんだったらどうするのよ。あんたみたいな変態のおじさんのかもしれないでしょ」

「大丈夫、そういうおじさんは、普通のパンツ履いてるから、間違えないの。戦利品を履くことはあっても、大事なおパンツを洗って干したりしないの。変態のことはよく知ってるから」

「あきれるわね。変なとこには頭が回るのね。とにかく、ばっかじゃないの。絶対、おばあさんのよって、そこじゃないわよ。そもそも、盗むのが悪いんだから。盗むんなら、私のにしなさいよ」と言いつつ、少し猫なで声になりながら、

「盗むんなら私の心にしなさいよ」とうまいこと言ったでしょと、ドヤ顔をしながら、「最近、とんとご無沙汰だし」と続ける。

「心かパンツか、どっちのこと言ってんだよ。大体、お前に心なんてあるのかよ」

「何言ってんのよ、こんなきれいな心の人はいないでしょ」

「きれいな心の人が旦那の小遣い、一日五百円なんて言わないと思うよ」

「その分、私のきれいなおパンツ代にまわってるわけよ。だから、私のおパンツでいいでしょ」

「お前のパンツのために、ろくに昼飯代も出ないなんて。だから俺が人のパンツに向かっちゃうんじゃないのか。そうか、俺は、知らず知らずのうちに、パンツの恨みをパンツで晴らしていたんだ。因果は巡るってやつだな」

「それははき違えって言うのよ、パンツだけに」

チャンチャン。

やはり、漫才のネタまで、警察官の堅さが抜けない畑山ではあった。