【前回の記事を読む】ド田舎の集団いじめ…先生は無視、親友からは「友達やめたい」

第三章 ぽんこつ放浪記

1.母の呪文:母と娘のキツイ関係

親友

いじめのターゲットが私以外の誰かに変わっていた。子どもは飽きっぽい。標的はどの子になったかすぐにわかった。

彼女は他校不良女子から目を付けられる不良の代表。不思議なことに彼女とはなんだかウマがあい、余され者同士仲良くなった。ただ、下校後、彼女は他校女子と喧嘩してくるとか、彼氏とシンナー吸ってくるとか、私には全然わからない世界で過ごしていた。彼女はそんな世界に私を一度も誘ったことはなかったが、何でも話してくれたし、私も彼女には何でも話せた。一緒に漫画を読みおしゃべり、友達と過ごすってこんな楽しい時間なのかと思った。

そこに熱血担任先生が、今度は

「あいつと付き合うのはよせ」

と言う。

学校一の不良と学校一の優等生の親友関係。こんなのあまりない。彼女のお陰で学校に行けるし、彼女は私を悪い道に誘わない。私も彼女に干渉しない。私も彼女もお互いに何かわかっている。いじめ女子軍団が解散しても私と彼女の関係はずっと続いた。彼女の生い立ちや、つらいことが自分と重なったし、彼女もそう感じていた。私たちはまさに仲間だった。

中三のある日、自分の親との行き詰った思いを彼女に話すと、彼女は、

「ねえ、カバン潰してみる?」

と言った。いつか

「もう重たい教科書入れないであなたみたいにカバン潰してみたいな」

と言ったことを覚えていてくれた。一週間後、カバンはカッコよく潰れて戻ってきた。私は何だか晴れ着を手にしたようで嬉しかった。彼女とそのカバンをソリにして雪の坂道をキャーキャー笑いながら滑ったことを鮮明に思い出す。私が大学に行ってもずっと親友のままだった。

私は大学生、彼女はキャバクラ嬢で一緒に暮らしていたこともある。彼女は私が心を許せた最初の親友。彼女の人生は波乱万丈で、全身入れ墨の方と一緒になって彼女自身も太ももに美しい刺青。刺青は一緒にお風呂に入ると肌から浮き出てそれは美しかった。今でも彼女を大切に思う。