■一縷の望み

佑輔は2か月の入院期間を経て退院した。4月下旬のことである。

佑輔は、法務省のいわゆるキャリア組であり、結核という病が、出世を妨げることはなかった。その翌年4月、東京出入国管理庁に栄転となった。

仁美は、夫の出世をどう感じていたのか。妻として家庭を守り、夫に尽くす、そのような女性像は、結婚前に抱いていた夢であり、現実とはかけ離れてしまった。

夫の病から派生した癒しがたい出来事は、仁美の心の余裕を完全に失わせていた。

仁美は、東京都内で購入した新築マンションでの生活で、もしかしたら安寧を得られるかもしれないという一縷の望みにすがるのであった。

佑輔は2か月の入院期間を経て退院した。4月下旬のことである。佑輔は、法務省のいわゆるキャリア組であり、結核という病が、出世を妨げることはなかった。その翌年4月、東京出入国管理庁に栄転となった。

仁美は、夫の出世をどう感じていたのか。妻として家庭を守り、夫に尽くす、そのような女性像は、結婚前に抱いていた夢であり、現実とはかけ離れてしまった。夫の病から派生した癒しがたい出来事は、仁美の心の余裕を完全に失わせていた。

仁美は、東京都内で購入した新築マンションでの生活で、もしかしたら安寧を得られるかもしれないという一縷の望みにすがるのであった。

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