【前回の記事を読む】時間に追われる仕事ながら…少し意外な「添乗員の唯一の休息の場」とは?

がんばれ、新人添乗員

シカゴ到着

8月半ばで気温も35度近くあり、じりじりと太陽が照り付け暑いのだが、湿度が少ないのでカラッとしているのが救いである。男はスーツ、女はスーツやワンピースのいでたちでバスに乗り、ライアーズ本部があるビルに向かった。

玄関前には、モザイクタイルが敷き詰められた広々としたスペースがある。

皆、ふざけることもなく神妙な面持ちでビルに入り、エレベーターで本部事務所のある十五階へ。本部では役員数人が出迎えてくれた。

「やあ、よくいらっしゃいました。テキサスでのホームステイはいかがでしたか」とにこやかに話しかけてきた。緊張していた学生たちもほっとしたような様子である。

前列にいた大橋さんが「はい、とてもよかったです。英語も少し上達した気がします」と言うと、横にいた岸本さんは「食事が多いので、少し太ってしまいました。でも美味しかったです」と続けて答えた。

このように、学生たちは臆することなく役員たちとなごやかに言葉を交わしている。これもホームステイでの効果であろう。アメリカでは日本のように以心伝心の世界でないため、自分の意見を言うことが一番大事である。たとえ一か月であっても一人でホームステイをするには、何でも積極的に関わっていくことが必要だ。学生たちはそれを身をもって経験したに違いない。

真知子も二年前のカリフォルニアでのホームステイ中は、積極的に近所の住人とも交流した。話すことで心が通じる経験もした。

あるとき近所のおばあさんが「私は日本がずっと嫌いでした。というのは、息子が太平洋戦争で日本軍に殺されたからです。でも、今あなたと会って、世代が変わっているのにいつまでも恨んでいたらお互いのためではないと思ったの。だって、あなたと話していたら楽しいんですもの。これからは若い人たちの時代ですものね。若い人たちはこれまでの歴史を踏まえて、良い関係を続けていただきたいわ。あなたと話せてよかった、ありがとう」

国と国との外交はもちろん必要だが、私たち一人一人が心の交流をし、理解し合うことが、平和な世界を作るために一番大切なことだと実感したのであった。

表敬訪問が終わると学生たちもほっとした様子で、ビルの前の広場でそれぞれ気の合う者同士で記念写真を撮っていた。しばらくして、バスは再びホテルへと向かった。