【前回の記事を読む】サロンビジネスは“人”が商品。人が変われば顧客も失いうるのがサロン店の常なわけで…

序章 サロンビジネスの「そもそも」

「あり方」とは?

“あり方”とはなにか? 人が他者との関係を保つために不変的なもので、国や時代、流行など一切関係なく、過去から未来永劫に働く“原則”のようなものです。

具体的に例を挙げるなら、「誠意」「希望」「勤勉」などといった概念。これらは、時代が変わったからといって変化するものではありません。このような概念を、この本では“原則”と呼ぶことにします。

僕たちのように日々サロンに立ち、直接お客さまに触れる仕事に携わる人間は、こうした人格に関わる“原則”に磨きをかけて接客しないと、お客さまに接している側の胸の内を見透かされてしまうのです。

ちょっと余談ですが、コンビニなどのショップで、「ありがとうございました」とか「いらっしゃいませ」と店員に声かけをもらいますが、その店員は本当に心から、「ありがとう」とか「いらっしゃいませ」と思っているのか疑問だと感じたことはありませんか? これなのです。

サロンビジネスではお客さまに直接触れているので、それこそ、接している人間の胸の内などを、すぐに見透かされてしまうのです。僕自身、美容師という職業に長年携わっていますが、直接お客さまに触れて対価をいただくこのようなタイプの仕事では、提供者側とお客さまのあいだに不思議な“意思疎通現象”が起こると感じます。

言葉を超えて伝わるというと、ちょっとおおげさに聞こえるかもしれませんが、僕の経験上、たしかにこちら側の意志とか、相手であるお客さまの意思などが、お互いに言葉を超えて通じ合う、なにか不思議な力が働いているのは間違いありません。そして、ここが大事なのですが、先に例として挙げた「誠意」「希望」「勤勉」などは、人それぞれ解釈が違ったりします。そこで、あなた自身がこれらに対して“説明文”を作るのです。

たとえば、「誠意」とは、「常に相手の立場になって対応すること」とか、「希望」とは「未来へつなぐための思想」などと、それぞれの意味を曖昧にせずに、あなた自身の考えでハッキリと″意味づけ”をするのです。いかがでしょうか? これを機にぜひ接客に必要な“原則”をピックアップして、あなたなりの説明文を作ることをおすすめします。

ちなみに、僕が仕事において必要だと思うことを一部挙げますと、「誠意」「正直」「寛容」「忍耐」「勤勉」「謙虚」といったところです。なかでも僕は「誠意」に重きをおいています。このようにして作り上げた自分なりの“原則”は、それを中心においた接客を心がけることで顧客との信頼関係を築く礎になります。