「そのくせ今の娘だからさ、足なんか長くてほっそりとしてるしねえ。目なんか顔の半分もあるし、芸能人みたいなファッションだし。あれで日本人なんだからねえ」

「だってあの子。モデルもやってるのよ。もちろんテレビや雑誌に出てくるような一流どころじゃないけど」

「モデルじゃなくて、コンパニオンとか言うんだろ。企業の宣伝とかイベントとかで呼ばれてさ。町中でティッシュ配ってる可愛いお姉ちゃんとか、ああいう人種って、安い金でこき使われているらしいじゃないか。一種の奴隷労働だよ。でもさ、あの体はさすがに、資本だわよ。あたしなんて、若い頃から、顔も体も、男に褒められたことなんて、コレっぱかしも、なかったからね」

いまいましく舌打ちしながら、遠い目をして老婆が言った。そしてむっつりと仏頂面をして、頬杖をつく。

睦子は、また始まった、と思う。

何だか空気が淀んできた。

睦子は、湘南のお嬢様時代はどうしたの、ちやほやされてたんじゃないの、と突っ込もうとしたがやめにした。このフクロウ婆さんの話の矛盾をいちいち気にしていたらきりがないのだ。

二人とも、若い世代の色恋沙汰を云々することで、すでに自分たちが退場してしまった遠い青春を、秋の残照のように、ひそかにむさぼっていたのである。

【前回の記事を読む】口さがのない老婆の自虐「妖怪が一匹、そこにつっ立ってるんだ」