ここまで三枚のアルバムを紹介し、ビートルズの曲の編集や、ジョンとポールの作る曲の共通点。そして異なる点が見えてきます。

まずはビートルズの曲のほとんどは、出だしにインパクトがあるということです。カウントなどを含め、音より先に歌が始まったり、ギターやドラム一発で引き込んでみたり、もしくは、ギターのメジャー・コードからマイナー・コードへと落ちていくインパクトを付けたりなど。このほとんどは「出だしが肝心」という、ジョージ・マーティンの案なのです。

それは、アルバムの一曲目にインパクトがあればまず引き込みやすく、曲の出だしにインパクトがあれば「その曲を最後まで聴いてみよう」という気にさせます。そこに拘り曲を作れば「気づいた時にはアルバムを最後まで聴いていた」という結果に持っていきやすいのです。

それぐらいアルバムも曲も、出だしのインパクトを大事にしていて、尚且つ実際にしっかり聴いても「飽きさせず最後まで聴かせる」その力がビートルズにはあったのです。

たとえるなら、小説で言うところの『人間失格』(太宰治著、新潮社)は良い例です。

「恥の多い生涯を送って来ました」

……こんなこと言われたら、先が気になって仕方ありません。

バラエティ番組でも歌番組でも、最初にメインどころを持ってきたり、銃撃戦から始まる映画があったり。『ルパン三世』の映画やTVスペシャルは、必ず何かを盗むところから始まります。それらはこの作品がどういう作品かということを、一撃で教えてくれるのです。

しかしそれらには、もちろん失敗例は付き物です。音楽でたとえるところ、最初のヒット曲の呪縛から中々解放されない歌手。ビートルズを真似たいくつかのバンドは、デビューにこそインパクトがありますが、それ以降の作品については「単調で飽きる」や「何聴いても同じ」などの末路が手招きしています。

ビートルズはこの三枚のアルバムを通し、曲もアルバムも既に、人を引き込む出だし(デビュー)いと、魅了する展開(作品)、心を掴むエンディング(引退)。それらを感じ(予感)させてくれています。

そしてジョンとポールの曲の違いです。難しいことは言いません(言えません)。

私的には、正直この当時の二人にはそこまで大きな違いはないと思うのですが、強いて言うなら、ジョンの方がロックンロールで、ポールの方がメロディ・メーカーだということ。

ポールの場合、アップ・テンポな曲にしなやかなメロディを入れ、ノリノリで歌い上げます。そして美しいメロディの聴かすバラード、全体的に温かみも感じさせます。

ジョンの場合、アップ・テンポな曲はシャウトで歌い上げ、リズム感のある切ないメロディのバラードを作る傾向にあります。

コーラスの作りにも違いがあり、主旋律を交差させ、三人でハーモニーを作るジョンに対し、ポールはメイン・ボーカルの後ろで、演奏の一部のようなハーモニーを作る傾向にあります。

ビートルズ初期当時は、二人の作る曲、声も、そこまでの違いはないのですが、中期後期と進むにつれ、明らかな違いはどんどんと出てきます。そしてその頃になると、その中にジョージの曲もどんどん加わってくるのです。ただでさえ、一つのバンドにメロディ・メーカーが二人いるだけでも珍しいのに、それが三人。しかも全員がハイレベルで在籍しているとなると、珍しいを飛び越え、異例のことです。

(そりゃ、聴く人を飽きさせないわけですね)

先ほどの魅了する展開(作品)については、非の打ち所がないです。