【前回の記事を読む】「挨拶がわりに一曲歌って」の要望に…ビートルズのアメリカ旋風が始まったジョンの対応

2-3 A Hard Day’s Night

セカンド・アルバムの翌年、一九六四年七月に発売された、ビートルズ三枚目のオリジナル・アルバム。

アルバムと同タイトルの映画『A Hard Day’s Night』のサントラとして制作。アメリカで十四週連続一位を獲得。イギリスではまたしても二十一週連続一位となっています。

アメリカでいえばエルヴィス・プレスリー。イギリスでいえばビートルズ。この両者が、白人が黒人の曲をカバーした先駆者とも言えるでしょう。

しかし今作では初の全曲オリジナル、初の全曲レノン=マッカートニーの作詞作曲となっています。ロックンロール・バンド、アイドル、このような位置付けのビートルズが、全曲オリジナルというのは、当時としては本当に珍しいことです。ちなみにローリング・ストーンズのデビュー・アルバムは全曲カバー曲ですが、これも珍しいです。

では、全十四曲の中から抜粋します。前作以上に、疾走感溢れる名作です。

『ア・ハード・デイズ・ナイト』

―ジャーン―と、映画とアルバムのイントロを飾る有名な不協和音。二〇〇一年に、ジョージが「この音のコードはFadd9(Fアドナインス)」と明かすまで、どう奏でているかなど、専門家やファンの間で様々な物議が醸し出されたようです。

このアルバムからジョージはリッケンバッカーの十二弦ギターを使用し、それは劇中でも度々出てくるため、一気に世界的なギターへと変貌を遂げるのでした。(赤盤収録済)

『アイ・シュド・ハヴ・ノウン・ベター=恋する二人』

少しコミカルにもとれるような、ジョンの力強いハーモニカとギター(J‒160E)が癖になる曲。曲に切なさを足すように、サビの部分で演奏を抑え、ジョンの声とメロディを引き立たせています。スピード感がありながらも、切なく哀愁漂うメロディになるのは、ジョン・レノンの曲の特徴でしょう。(黄盤収録)