最初の出会い

秀一の仕事は、契約をしている花屋に、切り花を届けることから始まった。5か所を回り、最後の花屋に着いた。この店は一平の姪にあたる優香が営んでいると聞いている。店先で知り合いと立ち話をしていると、奥から女性が現れた。

ショートカットがよく似合う、色白でさわやかな笑顔。その女性と目が合った瞬間、秀一は稲妻に打たれたように立ち尽くした。

その女性は「橘優香です」と名乗った。

「永井秀一です、よろしくお願いします」

最初の出会いでの会話は、たったこれだけである。秀一は、初めて経験する感情の高まりに、戸惑っていたのだ。

優香も、クールな素振りでどことなく育ちのよさが感じられる秀一に好感を持った。秀一は、心のときめきを感じながら、切り花を毎日届けた。優香が顔を見せてくれると、ドキドキする気持ちがさらに高まるのであった。

秀一は、文部科学省に勤めていた頃、女性と付き合ったことなどなかった。金も名誉も社会的地位もある秀一にとっては、その気になればいつでも誰でも振り向いてくれる、ついてきてくれるなどと、自信満々の男であったのだ。

しかし今はどうだ。振られるリスクを恐れて、積極的に近寄ることができないでいるのだ。しかも、今の自分には全く自信が持てない。

秀一を自信過剰気味にさせていた全てのものを失っているからである。