──結局私は、本当のチャレンジの内容を言うことができなかった。

もちろん小説を書くというチャレンジは嘘ではないし、最大の夢であることに変わりはない。けれどそれをする前に、実はやってみたいチャレンジがもう一つあったのだ。いやそれは、小説を書くにあたって乗り越えなければならない試練というべきか。とにかくそれをしないことには、小説を書くという夢に進めない気がしていた。

けれどもちょっと恥ずかしくて、どうしてもそのことを同期たちに言うことができなかった。

私の本当のチャレンジ。それは、過去の自分をもう一度生きてみる、というものだ。十九歳の自分の足跡をたどり、魂の遍歴を追体験する。尾道がお遍路道を歩き回るように、私は過去を歩き回ろうというのだ。生まれ変わるために、変容を遂げるために──。

笑顔の同期たちを見渡しながら、自分は相変わらず変わり者だと思った。若い頃は人と相容れない性格であり、苦労の末にいっぱしの社会人なったつもりでいたけれど、同期たちに語れぬ夢にこれからうつつを抜かそうというのだから、結局いつまでも成長しきれない青二才。寂しくもあり楽しみでもあり、私は一気にハイボールの杯を空ける。

またいつかみんな笑顔で飲もう、こう励まし合い、同期会は解散したのだった。

そして私はチャレンジを実行するために、実家に帰ることにした。滞在期間は約一カ月を予定している。