僕は、近々、今の市場原理主義は崩壊すると思っている。今までのように、ブランドだとか生産調整だとかいって、農業者自らがどんどん生産物を廃棄するようなことはもってのほかだ。曲がったキュウリはダメだとか虫の食ったキャベツはダメだとか言っている場合ではない。

そんなもったいないことをし続けてきたのだから、今まさに我々は神様からバチが与えられることになるのだろう。昔の人はよく言ったではないか、

「ごはん一粒でも残すな! 残したら目がつぶれる」

と。

我が家の経営スタイルは今も昔もあまり変わっていなく、生産したものはたとえ規格外品であっても安くてもいいから全て引き取ってもらう、という全量出荷型の経営である。子どもの頃、畑を手伝っている時に祖父は言っていた。

「どんなに価格が安くても、自ら生産したものを自ら廃棄するなんて農業者のポリシーに反する」

と。そんな考えなものだから、我が家は市場からは相手にされずブランド志向の波にものれず、とても人様に紹介できるような経営はしていない貧乏百姓だ。だが、そんな我が家が僕は好きだし誇りでもあるのだ。

悲しきカボチャの運命(2006年10月)

最近、TVや新聞などでもずいぶんと騒がれたが、ついこの前、函館市のある農家が出荷したカボチャから基準値を超える残留農薬が検出されて、大問題になった。「ヘプタクロル」といわれる発がん物質で、30年以上前に使用中止になった農薬で、なぜか今頃になってわずかながら検出されてしまったのだ。

しかし、現在栽培しているそのカボチャ農家は、一切農薬を使用していない。つまり無農薬カボチャなのである。どうやら、以前その土地を使用していた農家が、ビートを栽培していて害虫駆除のためにヘプタクロルを含む農薬を使っていたらしく、その成分が土壌に残っていて検出されたようだ。

検出された、とはいっても一生涯そのカボチャを食べ続けたとしても、人体には全く影響が出ないほどのわずかな検出量である、という。しかしもったいないことに今回出荷したカボチャは全量焼却処分され、今後出荷予定のカボチャも現在は出荷停止となっており、倉庫で保管されているという。

このまま放置され続ければ、だんだん傷んできて品質も落ち、それこそ出荷できなくなってしまうであろう。栽培農家にとっては死活問題であるし、自分がかけた農薬ではないのに、それが問題となってしまっているので、理不尽な話である。