「おみよさん。お願いしますね」

「何をやればよいのですか」

「この帳面に書き込んでもらえればいいですよ」とノートとボールペンを渡した。

「先生。変わった物を持っているね」

「わたしは筆を使えないから書きやすいペンを開発したのですよ」

「その台帳みたいなやつもかぁ」

「そうです。これだと縦にも書けるし、横書きにも出来ますから」

「なるほどー驚いたねぇ……」

「これでお女郎さんたち、瘡毒の管理が出来るのですよ」

「それにしても便利なもんだぁ~」

ワハハハハ。

「ではおみよさん。書き方を教えますから」

「はい」

「ではお願いします」

「静。銀蔵に言って集めさせてくれ」

「あいよ」

「ではおみよさん。お女郎さんたちが来るまでに書き方を教えますから、こちらに来てください」

「はい」

日付 名前 瘡毒 淋病 注射回数 その他(毛じらみなど)

「この下に書き込んでください」

「はい」

「分からなかったら聞いてくださいね」

「はい」

不機嫌なツラで二十人、集まった。

「親父様。なんの用でありんすか」と新人お女郎さん、美咲十八歳が聞いた。

「この先生が瘡毒を治してくれると言うんだよ」

「本当でありんすか」

「まぁ……俺も分からんけど……瘡毒に効くいい薬を持って来たらしいよ」

「そうでありんすか」

「では元締。宜しいですか」

「いいよ」

【前回の記事を読む】「わたくしは、哀れなお女郎さん救済のために来たのですから」