【前回の記事を読む】日本人の外見なのに内面は…日系二世へのカルチャーショック

移民と兒童問題

本文

以上の事實は今後の敎育者並に宗敎家等の最も深い注意と愼重なる態度と深い顧慮と自覺とを以て訓導すべき重大なる意義を有し、且つ洵に興味ある大問題として著眼すべき事象である、例へば其子供等に日本の文部省發行の敎科書の中の修身の或る頁に、日本の皇室は二千七百年の歴史ある萬世一系の尊嚴な、世界に最も誇るべき事なるを敎えても、彼等移民の兒童には內地の兒童の如く闡明に其の理解が出來得ないのである。

所謂民主主義の()べて平民的な、無爵、無位、無階級的な米國育ちの彼等は、慨念的に之れを了解しても、凡べて目前の事象や周圍の感化が最も直接なので、とても內地の兒童が崇敬の念を抱くが如き眞實の了解が出來得ないのである、而してミスタ(・・・)ウヰルソン(・・・・・)式の極めて平民的の大統領のやうにしか理解が出來ない譯わけである。

斯て彼等兒童は比較的智識階級の日本人と日本人の談話中に、漢語や新熟語の混つた例へば洵に『痛快(・・)』でしたとか、或は『直覺(・・)()』に感じましたと云ふやうな言葉を使用してゐるのを聽くと無論了解に苦しむので、そこに反逆的な夫等の日本人を厭忌する惡弊がある、以上の問題は殊に戰後の今日大に考慮を要する重大問題としての急務である、之を其儘放棄して置くと祖國を忘却した自然の革命國が現出するのである。