美意識
私が情緒的なのは多分に母の影響を受けているに違いないと思う。
小学生の時だった。
母は外国のキャンディの花柄の包みを伸ばし
「ほらみさちゃん、こうすると綺麗な一枚の紙になるでしょう」
私も丁寧に包みの皺を伸ばすと、本当に綺麗な一枚の紙になった。
私はその綺麗な紙を定期入れに入れていた。
母は絵も上手かった。
母の描く絵はみなフェミニンだった。そのピンクやパープルの色。
月を見上げる少女のお皿は娘にあげたいと言っていたが、私の元には来なかった。
私の美意識は母の影響の何物でもない。
母は何故、小学生の私に「シラノ・ド・ベルジュラック」を見に行くように言ったのだろう。
母は何故、私に日本舞踊を習わせたのだろう。