夏の日に

登り行く程に油蝉とカナカナ

おのおの鳴き続け恋の季節を告げている

汗をたらして二人登ったは数年前

あの日の(きら)めく光を今も鮮やかに思い出す

身にまとわりつく蚊、蝿、飛ぶトンボ、蝶

鶯がすぐそばで鳴き(からす)(とんび)が彼方で鳴いた

誰も居ない頂上で唇を合わせた時

樹木の間を渡る風の音にもビクリとした

蛇が山道から斜面を下って走った

(あぶ)がうるさく羽音を立てている

小屋の中できつく抱き愛撫し合った

山が淡く灰色にかすんでいる

夏はあらゆる生物の活動の季節だ

あの(ひと)はどこに行ってしまったのだろう

写真を拡大 「編み目服の女」ー油彩、F10ー