オンライン追悼会

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「ところで村上さん、あなたはまだ何も言っていませんね? 途中から入られて遠慮されているのではありませんか。何か言いたいことがおありなんじゃないですか?」

あとから来た男、村上秀一郎は発言を促されて口を開いて言った。

「皆さんは斉田さんは本当に事故死したんだと思いますか? それともあれは自殺でしょうか?」

突然の質問に一同はどきりとしたような表情を浮かべ、奇妙な沈黙が彼らを支配した。ひと時置いて晃が口を開いて言った。

「どうして自殺だなんて思うんですか? 警察は事故死だと言っていますよ」

「それは警察の上の方で“原因不明”のまま片付けるなと指令があったからですよ。社会的影響も考えてね。世間に知られた方の死でしたしね。あの時点では手続き上事故死にするしかなかったんです」

百万遍のおじさんが言った。「寛二君が自殺だなんて絶対あり得ない。死ぬ動機がないじゃないですか。個人的にも経済的にも全く問題はなく、それに作家としてもこれから佳境に入ろうという時期だった。よくある初老の鬱になる年齢でもない」

晃は十人目の人物に畳みかけて問いかけた。「どうしてそう思うんですか? 親父の遺書はなかったじゃないですか?」

「私はあらゆる可能性を検討した方がいいと考えます」。新参の男は“あらゆる”という言葉に力を込めて言った。

晃は鋭く聞き返した。「その“あらゆる”には他殺も入っているのか?」

村上は言った。「言葉通りで、それ以上でも以下でもありません」

晃は憤慨したかのように続けた。「今更騒ぎ立ててどうしようと言うんです? 何か親父に恨みでもあるんですか? あなたは一体親父のなんなんです?」

「申し遅れました。私はあの時の斉田さんの事故の担当をした品川警察署の者で村上秀一郎と言います。事故処理はしたものの何となく自分としてすっきりしないものがあったんです」

斉田の兄が問いかけた。「何がすっきりしないんですか?」

「現場の状況とかいろいろね」