安全が担保されている職場や現場は、どこにも存在しない。唯一存在するのは、リスクのみであり、安全神話はあり得ない。そこで、無防備で(いたい)()な子どもに、(おろそ)かにしがちな安全の大切さを確実に教える。

昨今、公園の遊具・横断歩道・側溝・河川敷・暴走自転車・電車のプラットホーム・エスカレーターなどにおける子どもの事故が多発している。

トヨタの危機管理の取り組みとしては、最悪を想定して最善の対策を練る。新聞の三面記事の痛ましい事故事例を基に、どうしてこの事故が発生してしまったのか、どうやったらこの事故を防げたのか、盲点がどこにあるのかを、作戦会議のように、ファミリーで話し合いたい。

さらに、横断歩道の電子音やプラットホームの黄色の突起物や券売機の点字が、いったい何を意味しているのかを一緒に考察したい。体の不自由な方に対して、優しく思いやりの心のあるパーソンになれる。そして、危険源の近くでは、必ず、ギュッと手をつなごう。大切に守られていることを実感し、安全に対する意識が向上する。

高齢者ドライバーによる誤操作や無謀運転事故も、日常茶飯事になってきた。一瞬にして、奈落の底に落ちてしまう。

繰り返すが、トヨタの管理指標のプライオリティーは、安全第一である。品質第二があるから、第一の安全がクローズアップされて活きてくる。これがトヨタの、企業文化である。すべて、現地現物現認にて、実在するリスクの急所を、繰り返し教える。どこに危険が潜んでいるのかを、言葉に出して考え続けさせたい。

トヨタの安全ポイントは、安全の基本行動と危険予知の二本柱である。現場の実体験が本質安全につながる。家庭で子どもが、ガラスのコップを割ってしまうときがある。

「ダメじゃないの!」と叱責の言葉を掛け、勝手にプラスチック製のコップに切り替えるのは、無意味なことであり、何も進歩しない。「怪我をしなくてよかったね! 形ある物は、いつか壊れるよ。次から、どう扱ったら割れてしまわないかの解決策を、一緒に考えようよ」である。

子どもが失敗をし、ちゃんと謝れたら、「よく謝れたね! 偉いよ」と、ギュッと優しくハグして褒めたい。すると、その気モードになって、さらなる挑戦をするようになる。よく、「気をつけなさいよ!」との警告の言葉を聞くが、ご法度である。

まず第一に、気をつけなくてもよい安全保障のしくみを造り込み、安全教育の訓練を定期的に実施することを心掛けたい。家族全員参加の現地現物における安全教育が、子育ての愛情教育の第一ステップと考えたい。

親として、かけがえのない地球より重い命を、命を懸けてでも守り抜く意思を有することが、無条件の絶対的愛情である。安全を広辞苑で検索すると、平穏無事と記されている。また安全は、心理学者マズローの欲求の五段階図に、身の安全を守りたいとの基礎的な欲求として、位置づけられている。よって子どもには、情緒豊かに、心安らかな生活を送らせたい。