第一章 子どもの地頭力を鍛えるためのトヨタ式

子育てにおける決意と覚悟

子どもの希望に満ちた未来を創るためにやり遂げねばならない子育てプロジェクトは、親に与えられた重大なミッションである。この天命を全うすることが、幸福な人生につながると考える。よって、学校の先生や教育の専門家に、子育てにおける本質の部分を丸投げの責任放棄はいけない。プロにお任せしていいのは、時間効率アップを図るためのテクニック論だけである。

立会い出産の子どもとのファーストコンタクト時、「奇跡だ!」と思わず大声を発した。皆無の状態から、人間のカタチをした自分の分身が流星のごとく現れる、超越的かつ神秘的な出来事を、それまで想像すらしたことがなかったからだ。

遺伝学的には、熾烈な生存競争のなかで、一つの精子と一つの卵子が運命的に出会った奇跡の勝者である。一瞬で電流が走り、全身のあらゆる細胞たちが、一気に覚醒した。子どもの誕生のおかげで、憧れの父親になれたのだ。自身を捧げる一丁目一番地のライフワークは、子どもの輝かしい未来像を描くための、粉骨砕身の子育てであると決心した。

一度きりのはかない人生を生き抜いた足跡として、「後世に何を残せるか!」である。そして、(さい)は投げられた。

同時に、著者のアイデンティティーは、トヨタ自動車の社員であることではなく、真の父親であることが明確になった。鳴かず飛ばずのポンコツの著者は、微力ではあるものの、決して無力ではないはずと考えた。しかし当然のことながら、子育てに関しては、まったくのド素人である。誰しも経験がないから、リハーサルやテイクツーなしの、ぶっつけ本番の一発勝負となる。

また窓際族の著者には、潤沢な財産や教育エキスパートたちとの人脈など、まったくない。多少の生活費はあっても、ごくごく普通の凡人に過ぎない。しかも、少子高齢化に伴う学歴偏重の加速により、教育関連費が高騰している。さまざまな税改正や住宅ローンに(あえ)ぎながら、可処分所得が年々減少している。よって、資金力を活用して、有名な学習塾に通わせたり、家庭教師をつけてやることもできない。