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コラム

一人一人の伸びに向かい合うこと 2018年8月 藤井道子

どの年齢の子ども達にも、そしてその子ども達を教える側として共に働く大学生講師や主婦講師などにもいつも感じるのはどの年齢、どの立場になっても人と比べることには意味はないということです。生まれ持った個性を伸ばして力とし、家族に、社会に、そして他人にそれを還元していくことが大切だと思うからです。

保護者の方々にお話しするのは、私達はその子が以前よりどう伸びたかにポイントをおいていることです。それは生活面かもしれないし、学習面かもしれない。小さな声しか出せなかった子が大きな声で「できた」と言えるようになった、学校の生徒会や学級委員に初めて立候補できたといったことなどかもしれません。今まで笑顔があまり出なかった子が今日はたくさん笑った、そのくらいのちょっとしたこともその子の変化です。

でもそんなささいなことでもそうした今までになかった一歩は自分の殻を破って一歩前進したことに間違いないのです。子ども達が大きな声を出すことに何の意味があるかと思われがちですが、大きな声を出すことは、今まで内に抱えていた気持ちを声に出すことで発散させ、身体を解き放つ上でも重要です。

花まる学習会の授業でも、四字熟語を言ったり、音読したりした後、計算問題や思考問題に取り組むと驚く程集中します。その子の声がどのくらい大きかったか、誰が上手に読めたかではなく、その子の声が前よりちょっと大きく、ちょっと元気に言えたか、それだけを見てあげることで充分認めてあげられることです。そのためにもこちら側がその子の変化に気がつく感性が大切です。

思春期以降も家であったこと、学校であったことを話せる間柄になると学習も自然と伸びていくように思います。そうしたことも心をさらけ出せたことで、学習への集中力を生むのだと思います。部屋が片付いていないと新しいものを買っても置くところがありません。片付いて余裕があれば新しいものを置けます。勉強も同じ側面があると思います。

人は失敗するものです。テストで思うような点数が取れないこともあります。私たちは、テストの結果がどうかで厳しく言うことはしませんが、表面だけの学習や答えが合えばいいといった態度は良くないのではないかと生徒に話します。

数学でも答えよりそこまでの考え方と途中式が大切だというように。その結果だけにこだわってももう終わってしまったこと、反省は重要ですが、後悔しても仕方ありません。結果より過程が大切、思うような結果でなくても、学習の過程が向上しているならばそこは褒めてあげたいと思います。結果は今後に活かすためのものです。

どの保護者の方にも感じられるのは我が子への愛情です。

その愛情の矛先がその子自身の伸びに向かえるよう、私達はその子がどう伸びたかを伝えていくことも、子ども達の学習を見ていくのと同じくらい重要なことだと考えています。