第一章 私の経歴と実体験について

まずは私がどの程度のアルコール依存症患者であったのか、私の「アルコールに支配されていた半生」をお話しさせて頂きます。

私は四国の西の端にある、愛媛県宇和島市という場所で生まれ、育ちました。私の飲酒歴は私が一五歳の頃まで遡ります……。初めてお酒を飲んだのは中学三年生の三月。クラスメート三人と近くの公園で夜、花見の真似ごとをした時でした。見事に何十本もの桜が咲き乱れていましたが、田舎の良いところなのか、そんな立派な公園でも私たち四人以外には誰もいませんでした。仮に誰かいたとしても当時はモラルなんて言葉すらありませんでしたから、子供でも飲みたい時にお酒を買って飲むなんて自由でした。

中学校の卒業間近で浮かれていた私たちは近所の酒屋で堂々と好きなビールを選びました。とはいっても当時はA社かK社の二択でしたが、笑。広い公園の、公園灯に照らされた大きな桜の木の下で、私たちは敷物も敷かず好き好きにあぐらをかいて座りました。少し冷たくなった芝生がジーンズ越しに心地良く、とてもリラックスしていました。

まず、日頃から一番大人ぶっていたクラスメートがプシュっと五〇〇ml缶のドライビールを勢い良く開けて「いつものように」と、手なれた感じで「乾杯」の合図もなく飲み始めました。私はそれまでに一度か二度、父親にビールを面白がって舐めさせられていたことはありましたが、自発的に飲んだことはありませんでした。でも、その時は「負けたくない」「美味しそうに飲まないと恥ずかしい」と思ったのです。

飲む要領は缶ジュースと同じです、ただ「苦い」だけ。精一杯格好をつけてプシュっと開けてグビっと飲み込み、表情を変えないように気をつけました。それまでに舐めさせられた時と同じく、やはりビールは苦くて不味い飲み物でした。それからしばらく、くだらない話をしながらそれぞれがビールを飲んでいましたが、私は三人の目を盗みながらビールの残り半分を少しずつこっそりと芝生にこぼして飲み終わりました。

芝生はビールを飲まされても大丈夫だろうか、などと思いながら、スルスルとビールを吸い込んでいく芝生や同級生に囲まれて、「ビールは苦くて不味い」と感じている私はやはり子供なのだと、私は不完全な人間なのだと、何故か強烈に思ったのです。ビールを心から美味しいと感じて飲むことができたなら、それが私が完全体に、いわゆる大人になった証なのだと、この時一五歳の私の心の中に深く刻まれたのでした。今思えば、他の三人もこっそりこぼしていたのかもしれませんが、笑。