あたりを見回すと、空港にはほとんど人気がなく、とにかく10キロの米を持ちながらホテル行きの送迎カウンターへ行きました。しかし、無情にも本日の送迎は終了したとの事。地下鉄で行くように案内図を手渡されたのです。さすがに私はそこで力尽き、涙があふれてきました。

すると1人の女性が声をかけてきました。私がモロッコへ帰る途中であることをその女性に話すと、なんとホテルまで一緒に付いてきてくれたのです。彼女はモロッコ人でした。私の母がモロッコの王様の下で働いていると言うと、親近感が湧いたのかとても親切にしてくれました。無事チェックインし、部屋から母へ電話して到着が1日早まった訳を伝えました。

その後、無事モロッコへは着いたのですが、本来の予定では、モロッコの日本大使館員の方とフランス経由で一緒に帰ってくる約束だった為、私が来ないと大騒ぎになっていて母に電話があり事情を話したそうです。この事が後に大使館内で話題になり、「何故飛行機に乗せた!? 」という疑問が残ったという事でした。

私の記録【時期不明】

これは時期は忘れてしまったのですが、私と王様とのエピソードです。「ラマダン」の時の事です。

ラマダンとはヒジュラ暦における月の名前です。この時期は日が沈むと飲食をする事ができません。王様の生活は昼と夜が逆転する事になります。そうなると昼間のゴルフは、ナイトゴルフになります。

ある日の夜、私と母がいつものように王様のラウンドに付いて歩いていると、私の目の前に大きなカエルが飛び出してきました。私はカエルや虫が大嫌いなので、思わず大声で叫んでしまいました。すると王様のお付きの方が、「何があったのか!」と飛んできました。すると側近の女性が、「由紀子の目の前にカエルが跳んできたんだ」と説明してくれました。

その後、夜に大騒ぎをした事を、王様から叱られるのではないかとビクビクしていたのですが、何もおとがめはありませんでした。次の日、王様への挨拶の際も、何か注意を受けるのではないかとビクビクしていましたが、王様はいつものように優しい笑みで、「勉強はどうだ!? 困った事があればいつでも言いなさい」と声をかけて下さいました。

まるで本当の父親のように思えました。