旅人 

二人は村の中心に建つ屋敷に招かれた。村へ入ったとき、村長らしき初老の男が二人に言う。

「この度は、村の娘を助けていただき誠に感謝しております。それと言っては何ですが、この村の魔術師の方が、あなた方を屋敷にお招きしたいと仰っていまして、屋敷へ来られてみてはいかがでしょうか」

村長の頼みを二人は承諾した。そして、二人を迎えに来た男のあとに付いて行くと、大きな屋敷の前に立った。

屋敷は横に長く伸びており、他の家々とはまるで違う。明らかに丁寧に仕上げた瓦を使っており、建物自体も頑丈な木造建築で、屋敷の中も広々としているようだ。

屋敷の玄関へ入ると、そこに一人の女が立っていた。傷一つ無さそうな真っ白な餅の様に透き通った肌。膝まで届きそうなほどの長い黒髪を後ろで束ね、髪の先を金の髪飾りでさらに束ねている。服装は村人たちとは明らかに違い、清潔感のある真っ白な衣に、下衣は赤い袴を履いている。

いかにも物静かそうな、齢も三十にも届かないように見えるその顔は、二人を微笑で出迎えている。女のさしている紅の深紅が、女の微笑を際立たせている。

「この度は、村の子を救ってくれたこと、誠に感謝する」

女はそう言うと、二人を屋敷に上がるように促す。二人は、ゆっくりとした足取りで屋敷の廊下を進んでいく女のあとに付いて行く。

廊下を歩く女の姿は優雅で目を見張る。この世の者とは思えないその美しい顔立ちに、何一つ変えない無表情だが、それがかえって女の優美さを際立たせているように思えるほどだ。女は、ある部屋の前で立ち止まる。そして、両開きの戸を開くとその部屋の中へ入っていく。二人も女のあとに続いて部屋へ入る。