一週間後、審査会当日。

本日、消防署では「庁舎開放」が行われていて、一般市民が見学できるようになっていた。救急隊の審査会場にも地域住民が見学に訪れている。その中で、ひときわ目を輝かせて救急隊の活動訓練を見ている男児がいた。以前、ショッピングモールで心肺蘇生体験に参加した五歳の男の子・谷川伊吹と、その母親の雫が審査会を見に来ていた。

菅平「お父さんは、呼吸と脈拍が感じられない、大変危険な状態です。私は、救急救命士です。今から医師の指示を得て、気管にチューブを通して空気の通り道を作ったり、点滴をして心臓を動かすためのお薬を投与したいと思います、よろしいですね?」

家族役「はい、お願いします」

菅平「よし、聞け。活動方針だ。この傷病者は六十歳男性。窒息による心停止。心電図はPEA(無脈性電気活動)。特定行為で気管挿管とアドレナリンを投与し、救命救急センターに搬送する、いいか?」

赤倉・水上(声を揃えて)「よし!!」

菅平「隊員は指導医に指示要請と静脈路確保、薬剤投与。機関員は気管挿管の補助。私は現場を統括し気管挿管を行う」

赤倉・水上(声を揃えて)「よし!!」

菅平「ポンプ隊長。ポンプ隊で胸骨圧迫と搬送経路の確保を頼む。隊長は、家族への対応と時間経過を記録してください」

ポンプ隊長「了解」

五分経過。

菅平「気管挿管、完了」

赤倉「隊長、静脈路確保後、一回目の薬剤投与が完了しました」

菅平「よし、効果の確認を行え」

赤倉「隊長、心電図波形あり! 脈が触れます」

菅平「よし、再観察を行う。機関員、心電図モニターをプリントアウト。隊員、本部に報告」

赤倉・水上(声を揃えて)「よし!!」

菅平「ご家族の方、いま、お父さんの心臓が動き始めました。このまま人工呼吸を続けて救命センターに搬送します」

係員(ピーッと笛を吹く)「想定、やめ!!」