ある給食の時間に僕は、山本君と早食い競争をした。その日の給食はカレーで、全部食べないとお代わりができなかった。僕と山本君はどうしてもカレーのお代わりがしたくて必死にご飯を食べていた。そして僕と山本君は同時に食べ終わり、カレーのお玉を取り合った。

「横関、俺が先だよ」

「ダメダメ、これだけは譲れないし」

僕たちは笑いながら取り合っていた。そのやりとりを見かねた先生が怒鳴った。

「二人とも行儀が悪いです。そんな食べ方をするならお代わりはさせません」

僕たちは怒られた上、お代わりができないことで落ち込んで席に戻った。席に戻った時、僕だけが担任の先生に呼ばれた。

「横関さん、あなた女の子なんだからそんなご飯の食べ方をしてはいけません」

「え?」

「お椀を持ってかき込んで。女の子がそんな風に食べたらどう思います?」

僕は納得できなかった。怖い先生であってもその言葉だけは許せなかった。

「何で自分だけなんですか?」

「山本君とあなたは違うんですよ」

「…………」

「とにかく、そんな食べ方はしてはいけません。行儀が悪いです。見ていてかっこ悪い」

「……はい」

「話は以上です。お代わりがしたいならどうぞ自由にしてください」

僕は簡単に打ちのめされた。悔しくて、恥ずかしくて、納得のいかないことだった。もうお代わりをする気にはなれなかった。今になれば先生の言いたいことが分かる。ご飯の食べ方は重要であり、人間性が評価される仕草の一つとなるのだから。ただ、僕は女の子としての生き方なんて望んでいない。その現実を強調し注意されることは酷だった。