【前回の記事を読む】女扱いされるくらいなら「いっそボコボコに殴られたかった」

居場所

卒業式当日。僕はウキウキした気持ちで目が覚めた。ブレザーを着ることが嬉しかった。袖を通して鏡の前に立つ時に村瀬の顔が浮かんだ。早く会いたかった。

学校へ登校する時はとてもドキドキした。なぜならみんなの反応が気になって仕方なかったからだ。

僕はいろいろなことを想像した。シーンと静まり返ってしまったらどうしよう。案外、賑やかな中で気付かれないだろうか。僕はそわそわしていた。

教室へ着くと、みんなが一斉に僕に注目した。僕はばかにされるような気がして少し俯いた。

「かっこいい」

クラスメイトの女子たちがそう言って集まってくれた。ちょっとだけ意外な反応に僕はほっとした。

村瀬が来た。

「えっ、ちょっと何それ?」

「何って制服だよ」

僕の顔はいつも村瀬の前になると緩んだ笑顔になる。

「違うよ。あんた、それで中学校入学するの?」

「いや、違うけど」

「ちょっと、男みたいじゃん」

僕は嬉しかった。村瀬と話せて。そして、村瀬の制服はとてもかわいかった。そんなこと言えないが。

「あたし、横関のスカートの方が見たかったわ」

「うるせえよ」

担任の先生が来た。

「横関さん、おはよう。誰かと思いましたよ。かっこいいですね」

先生は笑っていた。僕も笑っていた。好きな格好をできることがこんなにも幸せなことだとは思わなかった。

散々悩んでいた卒業式には胸を張って出席をした。この日はカメラの持参を許され、たくさんの友人や先生と写真を撮った。もちろん村瀬とも。小学校の卒業式は本当に楽しかった。