榎本さんの奥さんはメロンを買って来て、改めて山川商店にお詫びに行ってくれました。同様なことが前にもあったよな。これで三度目だ。俺は招き猫ならぬ金喰い猫だ。苦労ばかりかけている。ごめんなさい。榎本さん。これでは高貴な血筋だとは言えないよな。一息付いたところで夕食になった時、昼間の事件について榎本さん夫婦が話していた。実は榎本さんは事件の核心をよく分かってくれていたのだ。

榎本さん

「にゃん太郎をきつく𠮟ったけれど、よく考えてみると、猫だから、店から好物を盗んで来るのは仕方ないことだよな」

「俺が感心するのは、俺のために持って来てくれたことだ。海老の匂いがするものを、自分で食べずに我慢してさ。そんな思いやりが猫にもあるなんて驚きだよ」

奥さん

「ほんとうにね。にゃん太郎は思いやりや孝行心があって、立派だわ。飼い主のために、店から好物を盗んで来てくれる猫の話なんて、聞いたこともない」

「にゃん太郎を飼うようになってそろそろ5年になるわ。飼ってもらった恩を感じているのかしら。5年経っても恩を忘れないなんて、義理堅いのね」

二人の話はまあ的を射ていると満足したよ。俺が盗んで来たはっぱえびせんが食卓にのぼっている。

「にゃん太郎のプレゼントだ。ありがたくいただくよ」と言って夫婦でお酒のおつまみにして食べてくれた。俺にも3つほどくれた。猫がたくさん食べると、塩分取り過ぎになって、腎臓に悪いという話があるらしいからだと。その日の夕食は、はっぱえびせんを皆でつまんで盛り上がり、とても幸せな気持ちに包まれたよ。

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※本記事は、2021年11月刊行の書籍『おもしろうてやがて悲しき』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。