かかる状況であるのに、黒川検事長は賭けマージャンが好きでよくやっていたそうで、パイ卓のある記者宅往復のタクシー代もすべて新聞社に持たせていたことなどが発覚し、辞職せざるを得なくなってしまった。その賭け金こそ安かったとはいうものの、検察庁の要職でありながら法律を無視するような男であったからこそ、首相の守護神役を果たしていたのではとも思われる。

さらに、後任として東京高検検事長になった林眞琴を、7月14日の閣議で検事総長にしたけれど、この人も行政官僚であった時期があったことは軽視できないのである。今後もこのような人事が続いていくならば、日本の検察庁関連の人々に「正義」はなくなってしまうであろう。

また、安倍政権は自民党歴代首相が守り抜いてきた「平和憲法」を壊し、戦争を認めさせようとしており、私には憲法改悪を意図しているように思われるのである。この法案が通れば国民は基本的人権を失い、「公益および公の秩序に触れた」と判断されては言論の自由がなくなり、首相が「緊急」といえば簡単に戦争に駆り出され、従わない者は逮捕・処刑(注)されるのではないかと危惧されてならない。

(注1)黒川次官が6年間行政官僚であった2014年には、小渕優子経産相の政治資金規正法違反を元秘書のみの立件で終了させ、16年に甘利経済再生相の斡旋利得違反でも全員を不起訴にし、18年には上記のとおり加計・森友疑惑で東京地検特捜部の捜査をかく乱している。

(注2)「桜を見る会」は従来参加者が1万人程度であり、予算も毎年1767万円であったが、第2次安倍政権以降は首相と昭恵夫人が招待者の人選に関与し、マルチ商法と認定された会社の幹部たちまでも招待して、参加者を約1万8千人とし予算額を以前の3倍以上にしている。また、招待者の名簿保存期間を短くし地検が搜査に入った時には書類を全部廃棄したといわせている。

(注3)これは黒川検事長を次期に(定年の長い)検事総長にするための布石と憶測されていた。

想田和弘著『熱狂なきファシズム』河出書房新社、2014荻野富士夫著『よみがえる戦時体制治安体制の歴史と現在』集英社、2018参照