ところが、1990年から2010年までの約20年間は、バブル崩壊による不動産の資産価値の著しい下落、リーマンショックによる終身雇用制の崩壊による所得減少や年金制度への不信により、将来の経済的不安が大きくなりました。つまり子供側も財産や収入が少なくなり、将来の経済的不安も軽減したいという思いから、親の相続で財産をできるだけもらいたいという考え方も出てきました。

特に高齢化社会と核家族化により、両親や兄弟と一緒に過ごした年月よりも、妻や子供と一緒に過ごす年月が圧倒的に多くなり、家という一族や家系の安泰よりも、各家族の将来の安心を優先するようになったのです。それにより、家族間で相続争いが多くなりました。

2018年の司法統計年報によれば、遺産分割事件の約77%が財産総額5000万円以下の相続で起こっています。その理由は、財産金額が低い家族ほど財産を分けることが難しいからです。特に①兄弟がいる、②親が自宅を所有している、③その自宅に子供家族が一緒に同居している、④その自宅を同居する子供家族が優先的に相続したいという場合には自宅を相続する子供の財産割合が非常に大きくなります。

またそれを現金にて調整する方法もありますが、多額の現金を支払えるケースは少ないため、折り合いがつかず争いに発展するのです。またそれに追い打ちをかけるように、前述した2015年の相続税法改正によって、相続税課税が強化されました。東京では5人に1人が相続税の対象になり、納税への不安も大きくなりました。

国も2010年以降の大きな変化に対応するために、2018年には40年ぶりの民法改正を施行して、法制度もそれに備える環境を整えました。しかしそれを活用する私達自身がその変更内容に頭がついていかない状況です。だから本書でも最新の法律・税制などを網羅できるようにしています。