艦長の長内は、ぐっと息を飲む。駆逐艦さくら、あさぎり、ゆうぎりの連合艦隊は全艦静まり返った。やがて、大日本帝国海軍連合艦隊、アメリカ太平洋艦隊、くれない艦隊の三つの艦隊が入り乱れての艦隊戦が始まった。

「わが駆逐艦さくらによる敵艦隊への魚雷攻撃開始せよ!」

と長内艦長の命令が出る。

「最大船速四十ノットで全速前進せよ!」

と続いて命令、すると、「最大船速四十ノットで全速前進、サー」とアンサーバック(復唱)が返ってくる。シューッと水蒸気を噴きだすような音で、駆逐艦さくらから同時に三本の魚雷が発射された。

「わが方の第一次魚雷攻撃、敵、アメリカ太平洋艦隊に命中!」

と航海見張り員から報告が上がる。「わーっ」と駆逐艦さくらの艦橋内に歓声が上がる。

「続いて、駆逐艦あさぎり、ゆうぎりもわが艦に従い、魚雷攻撃を開始せよ!」

と艦長の長内から命令が出る。

「われわれ、二番艦あさぎりも一番艦さくらに続いて、最大船速四十ノットで全速前進!」

「続いて、三番艦ゆうぎりも最大船速四十ノットで全速前進!」

「二番艦あさぎり、三番艦ゆうぎりは魚雷攻撃開始!」

続いて、「シューッ」「シューッ」「シューッ」……と駆逐艦あさぎり、ゆうぎりから敵・アメリカ太平洋艦隊に向けて合計6本の魚雷が同時に発射された。

「二番艦あさぎり、三番艦ゆうぎりの発射した魚雷が、それぞれ敵アメリカ太平洋艦隊に命中した模様!」

と航海見張り員から報告が上がる。「わーいっ」、「わーいっ」、「わーいっ」と駆逐艦あさぎりおよび駆逐艦ゆうぎりからも大きな歓声が上がっているのが、駆逐艦さくらの艦橋にも聞こえてくる。

「まだ戦闘は始まったばかりだ! 気を抜かずにいくぞ!」

と長内艦長が叫ぶ。

「砲撃も準備せよ!」

と続いて命令が出る。

「敵、くれない艦隊に向けて全艦、砲撃開始!」

と長内艦長。

「ズドーン」、「ズドーン」、「ズドーン」と三隻の駆逐艦の主砲が火を噴いた。しかし、なぜかくれない艦隊へ向けた攻撃は、すべて素通りした。まるで、くれない艦隊は透き通っている透明な正体のようだ!