第一章  ヨーロッパでの生活

そんなある日、三人が山の中で密かに作っていた秘密基地でいつものように遊んでいた。その基地は以前、ボブ達のお爺さんが猟の際に使っていた小屋で今は誰も使っておらず、中は棚が一つ置かれているだけだが三人で遊ぶには十分な広さであった。しかも、小屋のすぐ横にある洞窟には天然の炭酸水が湧いており、砂糖を持ち込めば天然サイダーが飲み放題だ。その小屋に家で使わなくなった椅子や机を持ち込んでいた。

やっかいなのはケントで、ゴミ捨て場に捨ててあるラジオや小さなテレビ、トースターなど次々運び込んでくる。ケントが言うには家のように色んな物を置きたいらしい。学校が終わると毎日通い、ガラクタばかりだが本当の家のように仕上がっていった。そこでおやつを食べるのが三人の楽しみになっており、その日もケントの持って来たバナナをほおばった。

「やっぱりバナナは最高だな」

「おいケント、いくらなんでも食べ過ぎだぞ。もう5本目だろ」

「ほんと食いしん坊だな」

三人がバナナをほおばっていると、基地の外で何かの鳴き声が聞こえてきた。その鳴き声がだんだん近づいてきて、三人は思わず息を潜めた。その瞬間、入り口からいきなり大きな猪が飛び込んで来た。三人はびっくりして思わず棚の上に飛び上がった。

すると猪が、そばにあったバナナを食べ始めた。あっという間に完食し棚の上の三人を見上げて、まるでバナナをよこせと言わんばかりに角を突き立て豚の様な雄叫びを上げた。

恐ろしくて三人は身動きが取れない。そうこうしていると、入り口からこれまたでかい猪が入って来た。身動きが取れないまま恐怖の時間が過ぎていった。猪は横たわりながら三人を見つめていた。

「おいボブどうしよう。あいつら動こうとしないぞ、もう夕方だよ」

ボブもこわばった表情で固まっていた。目は入り口を見つめ、口は真一文字で何も言わずにいた。するといいアイデアが思いついたのか、口元がパッと開き、ニヤリと笑いながら、ケントとマイケルに話し掛けた。

「いいかよく聞け、ここにバナナが一房ある。このバナナを持って俺が猪をおびき寄せるから、その間に逃げろ。お前達が逃げられたらもう一度棚の上に避難するから、山を下りてお父さん達を呼んで来てくれ」

ボブはバナナを右手にしっかり掴んで棚から飛び降りて、一目散に入り口へと走った。猪も慌ててボブを追った。ケントとマイケルも猪に続いて外へ出た。そして一目散で山道へと走った。