【前回の記事を読む】【小説】「ええー! 私自身がこの儀式のアイテムってわけ!?」

第四章【邂逅】

静寂を感じとり、阿吽の呼吸で二人はゆっくりと目を開いていくと、その二人の目に映ったものは、冠を被り、古代の雅びな衣装をまとった美しい女性の立つ姿であった。すらりと背が高く、古代ギリシャの彫刻を思わせるような整った顔立ちをして、結ばれた薄い唇が明日美同様の気丈さを感じさせた。

「二人ともご苦労様でした。礼を言います。私がアメノミヒミ姫です。どうやら今の世では、卑弥呼と呼ばれているようですね。これからあなたたちの力を借りてやらなければならないことがあるのです。よろしく頼みますよ」

「わあー綺麗、姫様は卑弥呼様だったのね、素敵―、かっこいいー」

明日美は想像した以上の美しい女王の姿に、一目でファンになってしまったようだ。佳津彦はただうっとりと見つめているだけであった。

「今あなたたちの目に見えている私の姿には実体がありません。あなたたちの心に私が投影したもので、いうなれば幻です。しかし空想ではない本当の私の姿でもあります。取って置きの若い頃の一番よい時の姿で、ちょっと見栄を張ってみたのですがどうでしょう」

「……」

いきなりのプチジョークに二人は何と答えればいいのかわからずに、愛想笑いを浮かべている。

「冗談です、まあいいでしょう。私にはあなたたちの心を読むことができます。古代の言葉は現代語とは違うものであり全く通じません。それが故に今聞こえている言葉は知識同様に、あなたたちから読み取ったものです」

そうは言うもののどこでそうなってしまったのか、後に気づくことだが、(ください)が、(ちょうだい)に誤変換されてしまったようで、それが逆に個性を際立たせる。つまりはたぐいまれなる美貌を持つ卑弥呼においては、チャーミングであるということであり、二人はそれを指摘することもできずに、そのままの言い回しで話は続いていく。

「しかもあなたたちの探求心は暴発寸前だということも理解しています。詳しい経緯は後で筋立ててお話しさせていただくとして、まずは近々の疑問のひとつひとつに大筋で答えるとしましょう。私が一方的に話しますので、それに対しての疑問を感じた場合は挙手でお願いいたします。私には瞬時に心が読めますが、あなたたちにはそのほうがやりやすいでしょうから、それでは私の前にきて座ってちょうだい、さあ始めましょう」