【前回の記事を読む】【小説】興奮が覚めやらず…夢中で棺の中を見る少女の姿に唖然

第四章【邂逅】

間に割って入るように

「佳津彦、そろそろ始めてちょうだい」

と、女王の声が聞こえてきた。それは穏やかながらも、やや強い語気をはらんでいたのだが、二人は気づかなかったようだ。それと同時に待っていました、といわんばかりに依頼に応え、佳津彦が軽い足取りで背負子へと走る。

「女王様、しばらくぶりですね、どうしていたんですか」

柩を覗き込み、遺骨に話しかけるように明日美が尋ねた。

「あなたたち親子があまりにも楽しそうだったので、微笑ましく思いそっとしておいたのです。ですが、その中に聞き捨てならない言葉があったのです。明日美、あなたは随分と言いたい放題言ってくれましたね。気持ち悪いだなんて、しかも三度まで、あなたには配慮というものがないのですか。私はとっても傷つきやすいのよ」

女王のご不満に明日美はその場に正座をしてかしこまり言う。

「ごめんなさい。怒っているんですか、許してください、マジで気持ちが悪くてつい言っちゃったんです」

「あ……。また言ってしまいましたね、四回目……。まあ仕方がありませんね。あなたは本当に正直ですからね。許しましょう。代わりにあなたにはやってもらいたい重要な役目があるのです。追って指示します。それから無理に丁寧な言葉を使わなくてもいいのですよ。あなたらしさがなくなってしまいますからね。それに女王様と呼ぶのもやめてちょうだい、この時代にはそぐいません」

「じゃあ名前を教えてください。なんと言うんですか」

「私の名は天之見日美姫(アメノミヒミ姫)。古い呼び名です」

「なんか天見家の先祖様っぽい名前ですよね。でも呼びづらい名前だなぁ、それじゃぁ……。ご先祖様がいいかなぁ、でもやっぱしっくりこないな、姫様にしよーっと、姫様と呼ばせてください、姫様」