【公企と独法の経営実績が異なる要因と群馬心臓C の問題点】

(ア)独法の神奈川循環器C の黒字要因は収支バランスの良さ

主な運営実績では、病床利用率(公企68.8%、独法72.1%)と平均在院日数(公企13.6 日、独法10.1 日)において、独法の方が良好な実績である反面、入院診療単価(公企10.4 万円、独法6.1 万円)では神奈川循環器C が5 病院の中でも最も低く、そのため入院収益(100 床当たり公企約25.7 億円、独法約16.2 億円、以下収益や費用は100 床当たりの金額を表示)も最も少ないという意外な状況になっている。しかしながら、独法は外来収益が公企より良好(公企約5.8 億円、独法約11.2 億円)であり、職員給与費(公企約17.9 億円、独法約14.2 億円)や材料費(公企約13.3 億円、独法約10.2 億円)が公企より低く抑えられており、収支バランスが非常に良くとれているため会計収支では黒字を確保できている。公企と独法の違いはこの収支バランスの適正化の有無にあると言っても過言ではないと思われる。(表2・3)

写真を拡大 表2:令和元年度/循環器系病院の公企と独法の経営実績比較表(1)
写真を拡大 表3:令和元年度/循環器系病院の公企と独法の経営実績比較表(2)

(イ)入院収益は高いが収支バランスが悪く収益収支が赤字の群馬心臓C

独法の神奈川循環器C と対極の経営実績となっているのが群馬心臓C である。病床利用率71.8%(独法72.1%)や平均在院日数10.4 日(独法10.1 日)は独法とほぼ同じであるが、驚くのは入院診療単価が14.0 万円(独法6.1 万円)と独法の2.3 倍で、入院収益も約36.8 億円(独法約16.2 億円)と独法の2.3 倍もありながら、収益収支は黒字ではなく約0.7 億円の赤字(病床数195 床で約1.4 億円の赤字)となっていることである。赤字の要因は、外来診療単価が1.2 万円(独法2.7 万円)と低く、外来収益は約4.4 億円(独法約11.2 億円)と少ないこと、支出面で特に材料費が約20.0 億円(独法約10.2 億円)と独法の約2 倍も多く、その他にも職員給与費約15.8 億円(独法約14.2 億円)や経費約8.2 億円(独法約6.9 億円)も独法よりやや多いことである。つまり、入院収益面では非常に高い収益を上げているが、外来収益が低く材料費等の支出抑制面で、収支バランスが適切にコントロールされていないという状況が赤字の大きな要因となっている。例えば、100 床当たりの職員数を見ても、医師23.6 人(独法15.5 人)、看護師112.3 人(独法75.7 人)、全職員195.9 人(独法124.3 人)と独法よりかなり多い職員数となっており、検討すべき余地は非常に大きいと言える。(添付資料A-2)