森川駅に到着した。病院に着くとそこには親戚一同が揃っていた。父大志もいた。

「省吾、どうだ、刑事の仕事は?」

「大変だけど、どうにかなってるよ」

「シーーーッ!」

大部屋で同室の人に迷惑がかかるからと、話も出来ない。個室には入れず、手術もしないのだろうか?

そして、医者が別室に家族だけを呼んで話をすると言う。

「あんまり大人数じゃ、お婆ちゃんが一人になっちゃうから、子供はこっちで待っててね」

幸子は省吾たちを残して兄姉と一緒に部屋を出た。孫だけが残され、意識のない祖母の顔をじっと眺めていた。

――このまま意識が戻らないのだろうか? 翌朝、祖母は息を引き取った。八十四歳だった。幸子は悲しそうな顔というより、不安気な様子だった。

「私は暫くここにいるからさ、あんたっちは一旦帰った方がいいよ」

「そうか、何にも出来ないな、俺は」

「畑の草取りとかやってくれるとありがたいんだけどね」

「うーん、範囲が広すぎるだろ?」

「うん。それはこれから考えるよ。だから、帰っていいよ」

「ごめん」

省吾は結局、お昼に大志と幸子と弟の雄吾、妹の雪乃と一緒にコンビニのサンドイッチやおにぎりを食べてから帰ることにした。森川駅では、雄吾は新幹線で名古屋へ、省吾は逆方向の新幹線。そして、雪乃は車で山梨へ帰ろうとしたが、ろくに話をする暇もなく、別れようとした。

しかし、別れ際に、「省吾お兄ちゃん!」雪乃が省吾に声をかけた。雄吾は手をふり改札に向かった。

「あのね、もしかしたらお母さんがね、静岡に住むことになるかもしれないんだよ」

「えっ、なんで?」

「だって、おじちゃんやおばちゃんの性格じゃ、お爺ちゃんの世話なんかしないでしょ?」

「うーん、そうだな」

「それで、うちのお父さんの食事は私も少し作れるしなんとかなるからさ、お母さんが静岡でお爺ちゃんの食事の世話をしながら畑もやらされることになるんじゃないかと思うよ」

「大変だな!」

「それで、誰でもいいんだけど、畑やる人、知り合いで誰かいない?」

「いないよ。俺は刑事の仕事があるし、静岡には知り合いもいないよ」

「東京でさ、仕事がなくて困ってる人とかさ」

「やるわけないだろ?」

「……そうだね」

省吾はそろそろ時間だ。

「じゃあ、通夜と葬式の時はまた来るよ」

「気をつけてね」

雪乃は手を振って見送ってくれた。