【前回の記事を読む】知らないうちに殺人事件に加担!? 割のいい仕事に隠された罠

携帯エアリー

二週間が過ぎた。警視庁では、決定的な証拠は掴めず、指紋、声紋、筆跡が一致したことで、その一致した人間を犯人にしてしまおうかという上司からの提案までが出て来た。しかし、刑事たちはそれは冤罪でやってはいけないことだと思っていた。

そんな中、捜査二課から、オレオレ詐欺の受け子の中の一人が裁判で、箱長のフルネームを言ったのだが、その名前は偽名で本名は大木正臣。ある卒業生名簿の中にその名前入りの写真があったことが二課の別の受け子からの情報でわかった。どうも、その人物が省吾の描いた似顔絵とよく似ていて、もしかしたらパーフェクトの社長ではないかという話になった。

省吾は受け子やかけ子をやっていた男に会いに二課まで行った。

「刑事の相田と言います」

「こんにちは」

「こんにちは。早速ですが、大木さんのことでお聞きしたいのですが……」

「はい」

「なぜ、箱長が大木さんだとわかったのですか?」

「受け子やってた時、資料集める係のやつが、卒業アルバムの中に箱長にそっくりの生徒がいるって言うんで、顔を見たら確信しました」

「資料はどうやって集めるんですか?」

「不用品の買い取りの仕事ということで、写真や賞状、トロフィー、盾、それに卒業生の名簿、地域や学校の連絡網まで買い取るんです。もちろん、服やアクセサリーも預かりますけど。それで、個人の特技や友達。もちろん実家の住所や電話番号もわかるんです。部活はなんで担任の先生は誰で、コンクールやインターハイや中体連や、野球で言えばどこのポジションで何番に打っていたのか? 作文の内容でわかったりするんですよ」

「それをいくらくらいで買い取っていたんですか?」

「値段は適当ですが、かなり安いです。それより、人は同級生の写真や思い出の品物はなかなか捨てられないものなんです。それを、大掃除の時期に思い切って捨ててしまおうと思う時もあります。そのタイミングは十二月の中旬から下旬、あるいは三月に、アルバム、電話帳、文集、同窓会名簿までを捨ててしまうケースが稀ではないんです。それを、『まとめて五百円で買い取りますよ』と言われれば、喜んで出しますよね」

「トロフィーや盾や賞状は?」

「それは、施設の子のために劇をやるって言えば、一つ百円でも喜んで売ってくれます」

「そのトロフィーや賞状でその人の特技がわかるってわけですね」

「そうです。大体、人って自慢話が好きなんですよ。毎年同じことで賞を取ったりしても、その賞状やトロフィーはだんだん増えて邪魔になるだけです。でも、なかなか捨てられないでしょう? それを何十年も経ったあと、それ程の人生を送っていない場合は、その話題で褒められまくったら、嬉しくなって話をしてトロフィーや盾をその人に渡してしまうってもんじゃないですか?」

「なるほど。それで、買い取った邪魔なトロフィーはどうするんですか?」

「ネットで売る時もありますが、その人に住所と名前を書いてもらって、ありもしないクラブにタダで入会してもらいます。それは本人の筆跡を上からなぞって買い取り屋が書きます。もちろん本人の許可なしで。その入会申込書とトロフィーを使ってスポーツ好きなお金持ちに競争心を持たせて、高いスポーツクラブの会員を勧めてお金を取る作戦です」