翌日一度出社し曽与島に前日の報告をして、これから小山内と一時間くらい話をしに行くことの許可を取った。一○時五分前にホテルに着きロビーで待っていると、エレベーターからスーツケースを転がしながら小山内が現れた。挨拶を済ませた後、ロビーラウンジに席を取った。

「先にチェックアウトを済ませてきていいですか」と小山内が言うので、「ええ、どうぞ」と答え、小山内のスーツケースを横に置き、正嗣は座って待つことになった。

しかし、五分経っても、一○分経っても、小山内はもどってこない。現地の人とでも連絡を取っているのだろうか。二○分経っても来ない。これはおかしい。何かあったのだろうか。

正嗣はフロントキャッシャーで小山内の部屋番号を言いチェックアウトしているかどうか聞いてみた。

すると一五分前に個人会計の精算を済ませセイフティーボックスの鍵も返しており、チェックアウトの手続きは終わっているとの回答だった。ならば小山内はどこへ消えてしまったのだろうか。

正嗣は会社へ電話し、曽与島に小山内が荷物のスーツケースを残していなくなってしまった旨の報告をし、何か会社へ連絡が入ったらロビーで待つ自分を呼び出してもらうよう頼んだ。

※本記事は、2021年6月刊行の書籍『サンパギータの残り香』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。