• マニラを訪れる人たち

昨日平瀬が小山内の様子がおかしいと言っていたのを思い出した。何か関係があるのだろうか。それとも、何かの事件に巻き込まれてしまったのか。いや、誘拐されたんじゃないか。なぜか次から次に悪いことばかり考えてしまう。時計を見ると、一一時になろうとしている。再度会社に電話し確認するも、何の連絡もなしとのこと。そろそろ現れてくれないと飛行機に乗り遅れてしまうかもしれない。人騒がせな人だと、今度は小山内に対して怒りの感情も芽生えてくる。

そんな矢先、チリンチリンとベルを鳴らしながらロビーを回るページボーイの姿が目に入る。掲げている小さなホワイトボードに"MR HIRUMA "とあったので、急いでフロントに行き電話を取り次いでもらう。曽与島からだった。

「晝間か。小山内さんが見つかったぞ」

「えっ、今どこにいるんですか」

「空港の日本航空のオフィスにいるみたいだ。パスポートに今日の日航(ジャル)の成田行きのチケットをはさんで空港内をふらふら歩いていたらしい」

「じゃあ、自分で空港に行ったんですか」

正嗣を待たせ荷物も持たず、小山内はなぜ先に空港へ行ったのかの疑問が湧いた。

「詳しいことは分からない。名刺入れにお前の名刺が入っていたんで、会社に連絡が来たんだ。日航のスタッフも小山内さんの様子がおかしいと言っている。とにかく急いで荷物を持って空港に行ってくれ」

電話を切るや、正嗣は急いでタクシーで空港へ向かった。そして、空港ターミナル三階出発ロビーにある日本航空のオフィスに飛び込んだ。そこにはぽつんと椅子に座らされている小山内の姿があった。