カラスの夢

フォールは辺りを見回して、不思議に思いました。

「あれ? また、お城の中? 嘘だろう……戻っちゃったんだろうか? 飛び出せたと思っていたのに……」

でも、自分の居場所をよく見てみると、同じ城ではなく、もちろん、同じ部屋のはずもありませんでした。今度は部屋の真ん中に大きなベッドがありました。その部屋は最上階にあるらしく、広い石造りの家で、遠くにはやはり山々や森が見えました。

大きな窓も石でできていて、窓ガラスはなく、そのまま白い雲のたなびく青空に繋がっているかのようでした。空には、カラスが!!! たくさんのカラスが、部屋の前に広がる空に円を描いていました。なんということでしょう! カラスの群れは、円を描きながら、まるで人間のような表情を浮かべて、フォールを見つめていました。

ずる賢そうでもなく、敵対心もなく、むしろ何かを訴えるような、悲し気な目つきでした。フォールは、カラスの群れと友達になりたいと思い、心は愛で満ち溢れていました。

カラスにも、フォールの気持ちがわかったのでしょう。群れの輪は、どんどん近づいて来ました。フォールが窓から左腕を伸ばすと、なんとまぁ嬉しいことに、カラスが一羽ずつやって来て、腕に止まったのでした。

フォールはうっとりしながら、カラスの一羽一羽に美しい、大切な名前を付けました。それから、部屋の中に戻ると、大きなベッドに腰かけました。窓の外に目をやると、相変わらずカラスの群れが部屋のそばを飛び回り、彼の方を意味ありげに見つめていました。

そのうちの一羽は、何か言いたげに、それも悲し気に、フォールを見つめていました。見ると、羽が少し変でした。怪我をしているのでしょうか? 部屋に向かって飛んでいる時、そのカラスは頭を右に回し、フォールの方を向いて、右目で彼を見つめました。

フォールは驚きのあまり、口が利けませんでした。その目は普通のカラスの目ではなかったからです。それは、目の周りにくっきりとアイラインが描かれたホルス(太陽神)の目だったのです。フォールはその場で呆然としていました。呆然としながらも、なぜか彼はそのカラスに親近感を覚え、もっと近寄りたいと思いました。

彼はベッドに腰かけたままでしたが、カラスが部屋に入って来るだろうかと訝っていました。そこで、腕を窓に向かって伸ばしてみました。すると、驚いたことに、カラスは窓から部屋の中に入ってきて、フォールの腕に優雅に羽を休めたのです。